toB CHECKLIST


新規事業の立ち上げには、スピード感と柔軟な検証力が求められます。そこで役立つのが「リーンキャンバス」です。しかし、どこから着手すればいいのか、どのように活用すればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか?この記事では、企業の新規事業担当者に向けて、実務に直結する活用方法やチェックポイントをわかりやすく解説します。記事の最後には実務で使えるチェックリストもダウンロード可能ですので、ぜひご活用ください。


1.リーンキャンバスとは何か?

リーンキャンバスは、アッシュ・マウリャが提唱した、新規事業向けのビジネスモデル設計ツールです。A4一枚のキャンバスに9つの要素を記入することで、ビジネスアイデアの構造を「見える化」できます。スタートアップだけでなく、大企業の新規事業でも活用されており、仮説の可視化と検証に役立つフレームワークとして注目されています。

2.なぜリーンキャンバスが新規事業に有効か

新規事業では、不確実性の高い市場で仮説を立て、素早く検証することが求められます。リーンキャンバスは、ユーザーの課題、解決策、差別化ポイントなどを短時間で整理できるため、プロジェクト初期の意思決定が迅速になります。また、社内関係者への説明資料としても活用できるため、共通認識を持つうえで効果的です。

3.よくある失敗とその回避法

リーンキャンバスを使っても、新規事業がうまく進まない理由には共通点があります。たとえば「顧客セグメントが曖昧」「価値提案が抽象的」「仮説検証をせずに進める」などです。これらの失敗を防ぐには、関係者とディスカッションしながら作成する、顧客インタビューを実施して裏付けを取る、定期的に更新するなどの工夫が効果的です。

4.他のフレームワークとの使い分け

リーンキャンバスの他にも、新規事業の立ち上げに活用できるフレームワークは多数あります。たとえば以下のようなものです:
SWOT分析:自社の強み・弱みと市場機会・脅威を整理したいときに有効
3C分析:競合・顧客・自社の関係を俯瞰したいときに便利
バリュープロポジションキャンバス:価値提案をより深掘りしたい場合に適しています
それぞれの目的やフェーズに応じて使い分けることで、戦略の精度が格段に上がります。

5.リーンキャンバス活用チェックリスト

以下のチェックリストを活用することで、リーンキャンバスを効率的かつ正確に運用できます。それぞれの書き方のポイントは次の通りです。

1. 顧客セグメント (Customer Segments)
何を書くか: 誰を顧客にするのか、その顧客はどんな人たちなのかを具体的に記述します。年齢、性別、職業、趣味、価値観など、顧客のペルソナ(典型的な顧客像)を明確にすることで、彼らが抱える課題やニーズを深く理解できます。
ポイント: 特に「アーリーアダプター(Early Adopters)」と呼ばれる、最初にサービスや製品を使ってくれる可能性のある顧客層に焦点を当てることが重要です。彼らは新しいものに抵抗がなく、フィードバックをくれる貴重な存在です。

2. 課題 (Problem)
・何を書くか:
顧客セグメントで特定した顧客が現在抱えている、本当に困っている課題を3つ程度書き出します。
・ポイント: 顧客が「お金を払ってでも解決したい」と思うような、根深い課題を見つけることが重要です。また、その課題を解決するために顧客が現在使っている「既存の代替品(Existing Alternatives)」も合わせて記載し、なぜそれが不十分なのかを考えます。

3. 独自の価値提案 (Unique Value Proposition / UVP)
・何を書くか:
あなたの提供する製品やサービスが、顧客の課題をどのように解決し、どのような価値を提供するのかを簡潔に、魅力的に記述します。競合他社にはない、あなたならではの強みや差別化ポイントが何かを明確にします。
・ポイント: 顧客にとっての「利益」や「メリット」に焦点を当てて表現しましょう。「ハイレベルコンセプト(High Level Concept)」として、事業を一言で説明できるキャッチフレーズも考えると良いでしょう。

4. ソリューション (Solution)
・何を書くか:
顧客の課題を解決するために、具体的にどのような製品やサービスを提供するのかを記述します。UVPを実現するための具体的な機能や仕組みを説明します。
・ポイント: 「課題」と「UVP」の項目で明確にした内容と、この「ソリューション」がきちんと結びついているかを確認しましょう。

5. チャネル (Channels)
・何を書くか:
顧客に製品やサービスをどのように届けるのか(販売経路、マーケティング方法など)を記述します。
・ポイント: オンライン(Webサイト、SNS広告、SaaSなど)、オフライン(店舗、訪問販売、展示会など)など、顧客にリーチするための具体的な方法を考えます。顧客セグメントに合った効果的なチャネルを選ぶことが重要です。

6. 収益の流れ (Revenue Streams)
・何を書くか:
どのようにしてお金を稼ぐのか、収益源を記述します。
・ポイント: 製品・サービスの販売価格、サブスクリプション料金、広告収入、手数料など、具体的な収益モデルを検討します。

7. コスト構造 (Cost Structure)
・何を書くか:
製品やサービスを提供する上で発生する主要なコストを記述します。
・ポイント: 開発費、人件費、マーケティング費、運営費など、ビジネスを回すために必要となる費用を洗い出します。収益の流れと合わせて、事業が持続可能であるかを検討します。

8. 主要指標 (Key Metrics)
・何を書くか:
事業の成功を測るための重要な指標(KPI:Key Performance Indicator)を記述します。
・ポイント: 例えば、顧客獲得数、リピート率、コンバージョン率、アクティブユーザー数など、ビジネスの成長や健全性を客観的に測れる具体的な数値目標を設定します。
9. 圧倒的な優位性 (Unfair Advantage)
・何を書くか: 競合他社が簡単に真似できない、あなたのビジネスが持つ特別な強みや優位性を記述します。
・ポイント: 特許、独自の技術、強力なブランド力、特定のコミュニティとの強固な関係、専門家からの推薦、独占契約など、模倣困難な要素がこれにあたります。

記事を読んで実際に取り組む方は、このチェックリストをダウンロードして、自社のプロジェクトにあてはめながらご活用ください。